恐怖体験談

開かない戸

事があったのは小学校五年生の時でした。その日は水曜日で、学校がお昼までしかない時間割りでした。

小学校から家までは、裏門から走って30秒足らずで帰れる程度の距離だったので、テレビっ子だった私は速攻で家に帰ってワイドショーを見ていました。丁度「3時のあなた」(笑)を見ている途中でトイレに行きたくなりましたが、当時私は相当の怖がりで、夜はもちろん、昼でも1人でトイレなんかに行くのは恐かったし、その時家には私1人……。限界まで我慢した結果、しかたなしにトイレに行く決心をしました。

トイレまでは、テレビのある居間から廊下に出て、居間に沿う様に進み突き当たりの右側。トイレに着き、扉を開けようとしても、戸が開きませんでした。

この扉が少し変わっており、家自体は、今現在築35年ぐらいで、結構古い田舎の家の為わからない人も多いと思うのですが、扉が今はなかなか見ない、木枠にベニヤ板をはって、木枠の梁(っていうのでいいのかな?)の一本に取っ手を付け左右に動く様にして、それを止めにして、勝手に扉が開かない様になっており、当然鍵もない、チープな作りの扉というより戸でした。

戸が開かないといっても、その取っ手は左右には動かせたので、何か引っ掛かってるのかと思いましたが、戸は手前開き、引っ掛かる物はありませんでした。怖がりならやめておけば良かったのですが、恐いという事より「変だ」という事が先行してしまい、私は力一杯戸を引っ張り、戸が開きました。正確には、完全に開いたのではなく、少し開いたところで私が硬直して動けなけなくなった、ということになります。

15cm程の隙間から私の見たものは、向こう側から戸を引っ張っている「蒼緑色をした手」でした。見えた瞬間、力が抜けて、すぐに戸は閉まってしまいましたが、しばらく私はそこで取っ手を持ったまま放心してました。正気にもどって一目散に居間にもどり、トイレに行きたかった事も忘れ、座布団を頭にかぶって、家族が帰ってくるまで、テレビを見て動きませんでした。

「蒼緑色の手」、誰か勝手に入ってきてたのでは?と思われる方がほとんどだと思います。でも、無理なんです。私に気付かれずにトイレに出入りすることが。トイレに行く為には、私のいた居間を通るか、トイレの窓から入るしかないのです。トイレの窓は大人がぎりぎり通れる程ですが、木枠に網を張ったハメ殺しになっており、やぶったようであればすぐ分かるし、まさか、汲み取り式の中をくぐってくる事も無いし……。

私は、家族の帰ってくるまでずっと居間におり、兄たちが何度かトイレに行き「問題なさそうだ」という事を確認するまで、じっとしていました。好奇心が猫を殺す、とはこういうことですね。今思えば、よくあの時漏らさなかったものだったなあ(爆)と思います。

投稿者:ライス 様(1999年 7月17日掲載)