恐怖体験談

揚羽蝶

今からお話しすることは、私自身が体験した、とても悲しくとても不思議で切ない思い出です。

あれは忘れもしません。私が高校2年の夏休みにこの悲しい事故は起きました。

小さい頃から数件隣に住む幼なじみのS君とは、当時互いの友人も変わり頻繁に遊ぶ仲でもなくなっていたのですが、お盆も近い夏休みのとある昼下がりにS君が珍しく私の家の前で私を呼ぶ訳でもなくただボーと立っているので、私は何か用事でもあるのかと思い、すぐに出て行きS君に声をかけたのですが、彼はニコッと笑い何でもないと言うとすぐに去ってしまいました。

変だな〜アイツどうしたんだろう?とは思ったものの、その時は気にもしませんでしたが、そのS君が海水浴に行ったきり行方不明になったのは、2日後の事でした。

地域の漁船と警察による共同での捜索も虚しくS君の死体は見つからず、1週間が経ち肉親達もなかばあきらめかけていた8月13日でした。捜索も打切りになりS君の父と兄が浜辺のボート屋から手こぎボートを借りて途方に暮れる思いで海に出ていると、10分もしないうちにそのボートの脇にS君の死体が浮いてきたのです。夏場だったため、死体は結構傷んではいたらしいのですが。S君の表情は安らいでいたそうです。

しかし不思議なのは、そのS君が行方不明になってから発見されるまでの間、私の家に訪れたちょっと変わった訪問者のことです。

彼が行方不明となった日の夜に気がついたのですが、私の家の玄関の中に1羽の大きいアゲハ蝶が壁にペッタリと留まって、まるで剥製のようにピクリとも動かないのです。

最初は死んでいるのかと思い手で触れててみると、モジモジと少し動くだけで逃げて行かないのです。変だな〜と思いながら見ていると、母が「それはS君が蝶になって還ってきたんだから、ちょっかいを出すな」と言うのです。そんなバカなと思った私ですが、さすがにその蝶が何日もその場所から動かないのには驚いていました。

しかし、その蝶がきて1週間経った丁度、S君の死体が発見されたとき、まさかと思いアゲハ蝶のところへいってみると、信じられないことにいなくなっていたのです。こんなことがあるんですね。ただの偶然では決して私の中では説明のつかない、切ない青春時代の体験です。

投稿者:どどんがドン 様(2001年 3月26日掲載)