恐怖体験談

刑場の怪[前編]

東京・下町に有名な刑場跡があるのはご存知ですか?

現在は寺院となっているその場所には1体のお地蔵様が奉られています。それはある誘拐殺人事件の被害者の霊をなぐさめるために建てられたものです。そのお地蔵様の存在や元刑場ということもあってか、その場所には「出る」というウワサが絶えません。

僕は友人を連れ立ってそのお地蔵様を見に行きました。もちろん、軽いノリです。門のところに1体のお地蔵様が奉られていました。毛糸のかわいい帽子がかぶせてあり、お供え物はお菓子。奉られている被害者が幼い子供なので、僕たちは「これだな」と思い、しばらくお地蔵様を見ていました。「たいして怖くないな」というのが、そのときの正直な感想でした。

帰ろう、と思ったその時、左手のほうに「いやな感じ」を覚えました。示し合わせた訳ではないのに、全員がその方向に目をやりました。すると、もう1体お地蔵様が。そこにははっきりと「〇〇ちゃん供養地蔵」と。なんともいえない、重苦しい雰囲気がそこにありました。「空気が重い」といった方が適切かもしれません。

「うわぁ」思わずそう叫んでしまうほどでした。しかし、どこか軽いノリが抜けきれていなかったのでしょう。記念にそのお地蔵様を写真に収めよう、ということになりました。

1枚目。カチッ。フラッシュがたかれていません。

フラッシュを確認して、2枚目。パシャッ。今度は大丈夫、ちゃんと撮れたはず。

3日後、先輩が現像されたその写真を持ってきてくれました。1枚1枚チェックをいれていきます。僕たちの間では、「あの地蔵の写真はどうなった?」という話でもちきりでしたので、当然、その写真のことが気になっていました。あれっ?ない?地蔵の写真がない!おかしい。ちゃんと撮ったはずなのに……。

ネガにははっきりとそのお地蔵様が写っていました。なのに写真は現像されていない。写真屋さんはネガに「理解できないもの」が写っていた時、あえてそれを現像しないことがよくあるそうです。そのことを思い出した時、「怖い」という気持ちよりも「撮るんじゃなかった」という後悔の念が先にでました。ああ、本当にこういうことはあるんだ、と。

その後、僕の親しい友人が立て続けに何人か病気で入院しました。偶然だ、とは分かっていても、どことなく気持ちの悪いものでした。

(刑場の怪[後編]へ続く)

投稿者:メタル君 様(2001年 5月 9日掲載)