恐怖体験談

真夏の夜の夢

16年前の夏に起こった不思議な出来事を書きます。

僕は急いでバイクを走らせていました。視線を落とすと、白いメーターの中で100キロ・110キロ・120キロと、オレンジ色の針が跳ね上がって行きます。「あれっ?誰のバイクだろう?」僕のバイクのメーターは黒。明らかに自分のバイクじゃないのに自然に操っている自分に、少し違和感を覚えました。

更に加速し続けていると3台のバイクに追いつきました。先頭は友人のA、その後ろにB・Cを従えてゆっくりと走っていました。Aはミラーでこちらの存在を確認すると減速を始めました。僕も減速してCの後ろに続きました。「何処に向かってるんだろう?」一緒に走ってるのに、A・B・Cと何処で会ったのか、何を話したか、全く思い出せません。

違和感を感じながらしばらく走ってると、見覚えのある景色が目に飛び込んできました。「小坪トンネル!!」しかし、誰も減速をしないところを見ると、ここが目的地じゃ無いようです。そのまま減速せずに小坪トンネルに突入していきました。

1つ目のトンネルを過ぎ、2つ目に入ってすぐにファンファンとバイクが空ぶかしする音が聞こえました。ふと横を見ると、「!!」今まで周りには誰も居なかったのに、1台のバイクが並走していました。ライダーは、こちらを見ています。

「笑った!?」ライダーはフルフェイスのヘルメットを被っていたのですが、明らかに笑っているのが判りました。その瞬間、僕の乗っていたバイクは、いきなりタイヤがロックして転倒!!僕は地面に投げ出されました。僕は激しく転がりながらも、不思議と痛みを全く感じません。

回転が止まり、地面の上を滑りながら前を見ると、火花を散らしながら滑っていくバイクと、C・B・Aの間を縫うように走り抜けていくライダーが見えました。

ようやく止まると、僕は2つ目のトンネルを出た所まで来ていて、異変に気づいたB・Cがこちらに向かって走っていました。Aは気づくのが遅れたらしく、かなり先にバイクを止めているところでした。何か叫びながら3人が走ってきます。

1番最初に僕の近くに来たのはBでした。「オイ、だいじょう…」そこまで言いかけるとBは2メートル位先で立ち止まってしまいました。すぐにCも無言でやって来てBの横に止まりました。しばらくすると、「お前等何やってんだ、早く助けなきゃ!!」と叫びながら走ってくるAが、僕の背中と複雑に折れ曲がった足越しに見えました。

どうやら僕は、うつ伏せに寝ているらしく、首が折れて背中の方に顔が向いているようでした。追いついたAもB、Cの横で「ヤバイよ、どうしよう…」と言いながら立ち尽くしていました。僕は、彼らのフルフェイスのヘルメット越しの点になった目を見ながら、「お前等、なんて顔してるんだ」と声にならない声で言いながらも、とにかく眠い…すぐに意識を失いました。

「ビー」という耳障りな目覚し時計の音で僕は目を覚ましました。「変な夢を見たな」と思いながらも僕は急いで身支度を済ませバイトに行きました。仕事中も昨晩の夢の事が気になって今一つ集中出来なかったのですが、何とか仕事を終え、家に帰りました。

家に帰るとすぐに電話が掛かってきました。電話の相手はAでした。

A「大変な事になっちゃったよ」
僕「どうしたんだよ?」
A「Dが死んじゃったよ…」
僕「小坪トンネルで?」
A「!!」
A「…なんで知ってるの?」
僕「すぐそっちに行くから、一緒に居たBとCも呼んで置けよ」
A「なんで知ってるんだよ?」
僕「とにかく行くから待ってろよ!!」
そう言って電話を切るとすぐに、僕はAの家に向かいました。

僕がAの家に着くと、すでにBとCも来ていました。僕が昨晩の夢の事を話すと、実際の現場の状況と僕の話では、ほぼ合っていましたが、1つだけ大きな違いがありました。

誰も、あのバイクに乗ったライダーを見ていないのです!!

「とにかく現場に行ってみよう」という事になり、小坪トンネルに行きました。現場に着き、Dの倒れた居た場所、Dのバイクの止まっていた場所、A、B、Cのバイクを置いた場所、BとAの言った言葉などを僕が説明すると、全て合っていました。

その他の状況を皆と話していると、突然「ファォン!!」とバイクの空ぶかしする音がしました。それまでバイクは1台も通っていないので、不思議に思い周りを見ると、トンネルの出口の所に、あのバイクが止まっていて、ライダーがこちらを振り返って笑っていました。

僕は怒りが込み上げてきて、「お前かぁー」と叫びながらヤツの所へ走っていきました。するとヤツは前を向き、バイクを走らせ、振り返る事無く左手を揚げ、走り去ってしまいました。皆に今の事を話すと、バイクの音は全員聞いていましたが、ライダーを見たのは、僕一人だけでした。

その後、警察に行って事情を話してきました。警察では、今までに同じケースの事故は無かった事、霊を見たという報告は多数ある事、それに伴った事故も何件もある事を聞きました。なんで、Dの見た景色が僕の夢に出てきたのかは判りませんが、この様な事が在ったのは事実です。

小坪トンネル等は、ミステリースポットとして、お約束となってしまい、訪れる人も多く、全然怖くないなどといった声もよく聞きますが、この様なスポットが危険なのは間違い在りません。みなさんも、この様な所に行く時は、気をつけてください。

投稿者:ZOY 様(2001年 6月 4日掲載)