私は、女性にしては珍しいと言われるんですけど、お城跡って好きなんで、よくそこらのお城跡に一人で行ってるんですね。で、もう何年も前になるんですけど、八王子城跡も行きました、一人で。当時、八王子城跡ってそんなに怖い所だとは思っていなかったんで、めちゃめちゃワクワク気分で行ったんですけど、それが大間違いでした。
ご存知ですか?あそこには、本丸へ続く「新道」と「旧道」があるんですよ。もちろん私、旧道の方へ行きましてね、そこは「旧道」とは言われてるものの、もう道じゃないんですよ。調度夏に行ったものだから、草木が多い茂って。木々は鬱蒼と這えていて、昼間なのに暗い!道すらも途切れ途切れで、さすがに「このまま進むと帰れなくなる」という不安が出てきたんですね。
で、記念に写真取って帰ろうと思いまして、カメラでその場を撮ったんですよ。そしたら、今までついていたフラッシュが付かない!&シャッター押せない!「帰れなくなる」という不安に「霊的な恐怖」も生まれました。その道が途切れている一点で、足が竦んでしまって、私暫く正面を睨み据えたまま仁王立ちしてました。その時は、なぜか前から目を逸らしちゃ駄目だと第六感が訴えていたんですね。
私が立ちすくんでいた時間は15分とも言えるし、15秒だったかもしれない。とっても長く感じられました。とにかく、ここを出なきゃ…そう思って一気に目の前から視線をもぎ取るようにして、背中を見せて、逃げたんです。それはもう、猛ダッシュで。
どこをどう走ったのか覚えてません。抜けた所は入り口より更に北でした。おかしいですよね、あそこは確かに一本道だったはずなのに…。
とりあえず陽の当たる場所まで来れたので、安心して、右肩に掛けたショルダーバックを左に掛けなおしたんです。そしたら、どうでしょう。パラリ…、服の肩ヒモが落ちてきました。切れていたんですよ。根元の糸がバッサリと。それも、引き千切ったようにではなく、鋭利な刃物で切ったように、切れ口が見事でした。
後日、友人に話したら、気のせいだと笑われましてね。悔しいからその洋服見せてあげました。その上で「今度は一緒に行こうね」と言うと(苦笑)「あんた馬鹿じゃないの!?」と青ざめながら拒絶されました。
諦めきれない私は、別の友人を誘ってまた城跡に行ったんですよ。やっぱり、城好きな人にとっては本丸を制覇したいですからね。で、この間怖い思いをしたのは、お殿様に挨拶に行かなかったからだと早合点して、二度目は真っ先に「氏照様のお墓」へ線香と花束、お酒を持って行ったんですね。
40段近くある階段を登って、お墓を見つけて、手を合わせました。同行した友人は何故か階段付近に立ち止まって、遥か後ろの方から私を見てたんですよ。その彼女が、私が手を合わせている時に突然、叫んで逃げ出したんですね。
友達を置いて逃げるとは何たる事か!!と後で友人を責めもしましたが、彼女曰く、「手を合わせてたアンタの隣に鎧来た人間がいた」そうです。またまた〜冗談でしょ☆とか言いたかったけど……しきりに「見間違いかもしれない、見間違いかもしれないっ」と繰り返すので、逆にマジだなぁこの子…なんて思ってみたり。
ようするに、初回来たときに旧道へ行き、足が竦んで前へ進めなくなった原因は、コレかもしれないと思いましたね。つまり…、私が睨んでいた先に「いた」ものは甲冑を身にまとい、私に向かって刀を振りかざす武者がいたのかもしれませんね。ただ、私には見えてなかっただけで……
きっと、彼らはずっと、小田原へ行ってしまった城主の留守を守っているのでしょう。なんだか切なくなりました。