兵庫県千草町を走る、国道72号線。この国道を岡山方面にひた走ってると千種高原というところにたどり着きます。ここは、スキー場や温泉がありレジャーでは兵庫県でも有名なんですが、心霊スポットであるという噂なんて聞いたこともないのです。
しかし、夏のある日にその恐ろしい出来事は起こってしまいました……。東京で一人暮らしをしている姉が帰郷したので、僕は新しく買った車に姉を乗せ、いくあてもないが、久々にあった兄弟との時間をドライブという形で楽しくすごしていたんです。まさか、楽しいはずのドライブがあんな形で終わろうとは……。
それは千草町にさしかかった時のこと。道路標識に「千種高原」という文字が見えたので、暇つぶしに行ってみようということになり、千種高原のほうへ車を走らせたんです。はじめは街灯などもあり、それなりに明かりもあり明るかったんですが、山奥へ入るにつれて街灯もなくなっていき、頂上についたころには車のヘッドライトだけが唯一の明かりになったんです。
その時は姉も僕自身も恐怖という感情はなかったのですが、星を見ようと車を停車させ、ヘッドライトを消したときに、その時は僕だけだったんでしょうか…背後に物々しい気配と、寒気を感じたんです。僕はそのことはその場で口にせず、とりあえずお家に帰りましょうと、こう切り出したんですわ…。僕と姉は車に戻りそして山を下りる道をひたすら下っていました。なぜかその時は二人とも無口で車内は妙な沈黙の空気が流れてたんです。
5分ぐらい車を走らせていると、二手の分かれ道にさしかかり道路標識が現れました。「←岡山→林原原生林」と書かれてありました。僕は、原生林などにいけば余計に恐い思いをするかもしれないと思い、岡山へいったん出て兵庫のほうへ帰ろうと左にハンドルを切ろうとしました。
その交差点は鬱蒼と茂る木々の中を走るアスファルトの道の交差点なのですが、近所に民家や建物などがあるわけでもなく昼間でも交通量はさほど多くもなさそうな寂しい交差点なのですが……僕が標識に従い岡山へ行こうと左にハンドルを切った瞬間、僕の視界にあるものが飛び込みました。それは、交差点の脇にポツンとおかれた花瓶に入った花だったんです。僕はその時瞬時にそれは不運にも事故で命を失われた方の魂を静めるものであろうと判断しました。
そして、車を走らせながら僕はあんなに寂しい交差点でも交通事故が起きるものなんだろうか……とそんなことを考えながら車を走らせていたんです。そして交差点を過ぎ真っ暗な道を100mほど走ったころでしょうか、突然車内の後方のルームランプがついたので、姉が明かりをつけ何かしているのだろうと、姉の方を見ました。すると姉も僕のほうを見ていました……。
長い沈黙を破るかのようについたルームランプ、しかし、姉はただ座席に深く腰を下ろしているだけであり、その姿勢からはとてもじゃないけど後方のルームランプをつけたような気配はうかがえません。僕の車はリモコンでルームランプを点けれる機能などはなく、後方のルームランプを点けるのであれば座席に乗りあがり無理な姿勢で点けなければなりません、もちろん運転しながらなど点けれるわけがないのです。
姉が僕に「どうしてルームランプをつけたの?」と聞いてきました。その瞬間、僕は、それはこっちのセリフだ、と思いました。しかし点けたのは僕ではないし、姉でもない。だとすると、二人しか乗っていない車内で後方のルームランプを一体誰が点けたというのだ???
頭がパニクりました。そしてとても恐くなり、こういう場面では「俺がつけたんじゃない」なんて言ったら姉までも冷静さがなくなってしまうと思ったので、その場は僕が点けたことにして、夢中に車を走らせ、やっと地元のコンビニまで帰ってきました。
そこで僕はすべてを姉に言いました。ルームランプは僕がつけたのではないこと、そして交差点の脇においてあった花瓶のこと、山頂背後に感じた物々しい気配と寒気のこと。そのことを言うと姉ももともと感づいていたようです。運転をしながら後方のルームランプなどつけれるはずがないと……。そして、山頂では僕と同じような寒気と恐怖が姉をそっていたそうです。
コンビニの明かりで車をみると、そこには見覚えの無い白い手形がべったりとついていました。気味が悪いので次の日に洗い流そうと洗車に持っていったんですが、その手形はおちませんでした。コンパウンドをしてもらい、やっと奇麗になったんですが……。
このことを、友達に言うと誰も信じてくれませんでした。「そんなことあるわけないじゃん、作り話にしてはできがいいね〜」とさんざん僕のことを冷やかした友達ですが、車についた手形を見せるとなにも言わなくなってしまいました。